『アメリカン・ビューティー』 3. 構成 - 空から眺める悲喜こもごも

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レスターの人生はふたつの出会いがきっかけとなって変わりはじめる。出会いが一幕め、出会いによって変化していくのが二幕めだ。ハリウッド映画はたいてい三幕で構成されていて、その分量はおよそ1:2:1。『アメリカン・ビューティー』の場合は以下のように区切られる。幕開始にとある特徴があるので明確。群像劇仕立てで、顔見せとストーリーの起動、描写に時間がかかるためか一幕めが長め。通常、二幕めに含むような内容が一幕めのほうに寄っていると考えてもいいかもしれない。これは『桐島、部活やめるってよ』に似ている。

アバンタイトル(00:25〜01:01)】
・ジェーン「殺してくれる?」

【タイトル(01:01〜01:05)】
・AMERICAN BEAUTY。

【一幕め(01:06〜44:14。43分8秒)】
・空撮からスタートしてイントロダクション(BGMつきナレーション)。初日。レスターが上司にレポートを書けと命じられる日。フィッツ一家が引っ越してくる。
・レスター夫妻がチアリーディングを見にいく日。レスター、アンジェラと出会う。
・リッキー初登校、不動産業者のパーティーの日。レスター、リッキーと出会う。夜中にレスターがキャロリンに楯突く。

【二幕め(44:15〜79:54。35分39秒)】
・空撮からスタートしてBGMつきナレーション。一幕めの最終日の翌日。長い一日。レスター、ジョギングを開始し、リッキーの部屋を訪問する。ベンチプレスとキャロリンへの本格的反抗開始(喧嘩)。広告会社を自主退職する。バーガーショップでアルバイトの申し込みと面接。ジェーンとアンジェラとリッキーが学校で会話。アンジェラがリッキーに関心を募らせはじめる。キャロリンとバディ(不動産王)がランチ後一線を越える。ジェーンとリッキー、懇意になる。レスターとキャロリン、夕食時に大喧嘩。リッキー、勝手に父親の戸棚を開けたことで折檻される。
・レスターとキャロリンがソファのことで大喧嘩する日。逆にジェーンとリッキーはさらに心を通い合わせる。

【三幕め(79:55 〜108:17。28分22秒)】
空撮からスタートしてBGMつきナレーション。レスターの死ぬ日。長い一日。レスターが当初と違って、息を切らさず姿勢よくジョギングをこなし、ワークアウトでしっかり筋肉がついてきていること、バーガーショップでの作業が板についていることなどから、二幕めの最後の日から相当程度時間が経過しているものと思われる(映画冒頭で「一年以内に死ぬ」とレスターは言う)。85:57から夜になり、クライマックスに突入していく。

【アウトロダクション(108:18〜)】
走馬灯。それぞれの終わり。人生の感想。空撮の視点が上がっていって〆。

おわかりのとおり、三幕すべてのはじめに空撮シーンがある。映画の最期のカットも空撮で、その視点が上がっていく。この点については後にふれたい。